ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈生〉の不可視化」 【せいのふかしか】


 「しかしこうした事態にあって、われわれが〈生〉の契機を実感できないというのは、ある意味では当然のことではないだろうか。……われわれの〈生〉において意味があるのは、断片化された「経済活動」、「自己実現」、「学校教育」だけであって、そこには〈生活者〉としての等身大の〈生〉の形は存在しないからである。端的に言えば「人間的〈生〉」は、現代社会において「不可視化」されているのである。」 (上巻 152-153



 「〈生〉の三契機」の実現を〈社会的装置〉への委託によって成立させる「〈ユーザー〉としての生」が拡大すると、「人間的〈生〉」「学校教育」「経済活動」「自己実現」という形で経験され、その根底にある〈生存〉の実現〈現実存在〉の実現〈継承〉の実現という三つの契機の根源的な意味やつながりが見えなくなること(〈存在の連なり〉の不可視化でもある)。

 そこでは「学校教育」「経済活動」の意味が「自己実現」を頂点とした価値のヒエラルキーに再編されるが、ここでの「自己実現」が「ありのままの私」「こうでなければならない私」といった歪な形状に変質しているため、〈生の混乱〉をもたらす一因になる。