ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈生〉の三契機」 【せいのさんけいき】


 「換言すれば、われわれには“生活”を通じて根源的に実現しようとしている何かがあるということである。そして本書では、そこに時代や文化的背景に関係なく、およそ人間が人間である限り必ず実現されなければならない“三つの契機”があるということに着目する。すなわちいかに〈生存〉を実現するのか、またいかに〈現実存在〉を実現するのか、そしていかに〈継承〉を実現するのかということである。本書ではこれらを、「人間的〈生〉」を構成する「〈生〉の三契機」と呼び、以下に詳しく見ていくことにしよう。」 (上巻 146



 人間存在が“生きる”と表現する営為の根幹にあるものとして、時代や文化的背景に関係なく、人間が人間である限り必ず存在していると考えられる三つの契機のこと。

 具体的には、必要物を確保し、そのための素材の加工や道具の製作、知識の集積などを行っていく〈生存〉の実現、集団の一員としての自己を形成し、また構成員との間で情報を共有し、信頼を構築し、集団としての意思決定や役割分担を行っていく〈現実存在〉の実現、自らが前世代から受け継いだものを、改良しつつ、再び次世代へと引き渡していく〈継承〉の実現のことを指し、これらは人間存在の生命性、社会性、歴史性にそれぞれ対応している。

 これら三つの契機は相互に連関しており、最も基底にあるのは〈生存〉の契機である。