ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈継承〉の実現 【けいしょうのじつげん】


 「〈継承〉とは、人間がひとつの生命体として必然的に死を迎えるという宿命によって、〈生活世界〉を通じて自らが前世代から受け継いだものを、改良しつつ、再び次世代へと引き渡していくことを指している。この〈継承〉という契機は、人間存在の“歴史性”という側面に位置づけられる。ただしここでの〈生〉には、「暮らしとしての生活」にも「精神としての生活」にも還元できない、“時間”の概念が含まれている。」 (上巻 147



 人間存在が“生きる”と表現する営為の根幹にある「〈生〉の三契機」のひとつで、時間の概念を含んだ人間存在の歴史性と結びついている。

 この契機は、「暮らしとしての生活」にも「精神としての生活」にも還元できないが、たとえ〈生存〉〈現実存在〉を実現することができたとしても、この〈継承〉が実現されなければ、〈生活世界〉(およびその骨格をなす「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉)は現世代とともに破綻し、次世代の人間は、〈生〉の実現に際して多大な困難を抱えることになる。したがって世代を越えて「集団的〈生存〉」を実現するためにこそ、〈継承〉の実現が求められるようになったと考えることができる。