ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈生存〉の実現 【せいぞんのじつげん】


 「まず〈生存〉は、人間が生物学的基盤を持つもの、生命体であることの宿命として、〈生活世界〉という場において、必要物を確保し、そのための素材の加工や道具の製作、知識の集積などを行っていくことを指している。この〈生存〉という契機は、人間存在の“生命性”という側面に位置づけられる。また前述した、「暮らしとしての生活」の基盤をなしているものだと言うことができるだろう。」 (上巻 146-147



 人間存在が“生きる”と表現する営為の根幹にある「〈生〉の三契機」のひとつで、「暮らしとしての生活」の基盤をなし、人間存在の生命性という側面に結びつく。人間存在もまた生物存在の一員であることを象徴するもので、西洋近代哲学の人間観においてしばしば軽視されてきた。

 三契機のうち最も基底となる契機であり、進化論的な文脈においては、「集団的〈生存〉」(複数の個体と協力することで〈生存〉を実現する)の高度化こそが、「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉の成立を促し(〈根源的葛藤〉の負担軽減)、この「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉の十全な運営を実現するためにこそ〈現実存在〉の実現が、また「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉の世代間の受け渡しを実現するためにこそ〈継承〉の実現という契機が出現してきたと考えることができる。