ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「暮らしとしての生活」 【くらしとしてのせいかつ】


 「ここから見えてくるのは、“生活”の概念には、衣食住などの必要を実現していく「暮らしとしての生活」と、それとは反対に、衣食住などの必要からむしろ離れるからこそ実践できる「精神としての生活」とも呼べるものがあるということ、そしてこれまで人文科学的な知において「人間的〈生〉」の本質とされてきたのは、あくまで後者の方であったということである。」 (上巻 146



 「人間的〈生〉」の実践を“生活”と呼ぶとき、衣食住の必要を実現するなど主として〈生存〉と結びつく側面を強調したもの。

 西洋哲学の人間観においては、古くはアリストテレス、近代ではK・マルクスやH・アレントに至るまで、〈生存〉と結びついた「暮らしとしての生活」は軽視され、とりわけそこから解放されたところにある「精神としての生活」(例えば、観照活動や言論活動や自己実現(自己表現)など)にこそあると考えられる傾向があった。

 しかし本書の認識では、「〈生〉の三契機」において、〈現実存在〉の実現も、〈継承〉の実現も、その意味の文脈は歴然として〈生存〉の実現という契機に行きつくように、「精神としての生活」といえども、その根源的な意味の源泉は「暮らしとしての生活」にこそあると考えられている。