ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「集団的〈生存〉」 【しゅうだんてきせいぞん】


 「例えばわれわれが属する哺乳類では、多くの場合“群れ”を構成し、集団を通じて〈生存〉を実現していると言えるだろう。このことを本書では、「集団的〈生存〉」と呼ぶことにしたい。ただし、ここで気づかされるのは、人間の行う「集団的〈生存〉」が、“質的側面”……においても、“量的側面”……においても、異常なほどに突出しているということである。人間という存在は、哺乳類のなかでも、まさに群を抜いて「集団的」な生物存在であると言えるのである。」 (上巻 157



 社会性を備えた生物存在が〈生存〉の実現を行う際、それを集団的に実現することを指す。特に質的にも量的にも集団性を突出させた人間の場合は、ここに「皆と一緒に、いかに〈生存〉するのか」という形で、「私が〈生存〉すること」と「皆が〈生存〉すること」が限りなく接近していることが含意されている。

 またこのことは、両者が限りなく一致していながらも、完全には一致していないという点で矛盾が内在していることも含意されており(〈根源的葛藤〉)、人間存在が「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉を生みだすよう進化したのは、「〈生〉の分析」(第二のアプローチ)の文脈では、こうした〈根源的葛藤〉がもたらす矛盾のストレスを軽減させ、より高度な「集団的〈生存〉」を実現するためであったと理解される。