ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「第一期:近代国家日本の成立から敗戦まで(1868年‐1945年)」


 「「第一期」の日本社会は、構造転換へと至るための土台が整えられた時代であった。というのもこの時代に、「官僚機構」や「市場経済」といった〈社会的装置〉の最初の構成要素が整備されたと言えるからである。とはいえ〈生活世界〉の実態から見れば、その影響はきわめて限定的なものに過ぎなかった。都市部で花開いた大衆社会や新しい生活様式とは裏腹に、圧倒的多数の人々の前には、依然として古い時代から続く濃密な〈生活世界〉、そしてむせ返るような生々しい〈共同〉の現実が広がっていたからである。」 (下巻 4



 〈自己完結社会〉が成立していく様子を、日本社会の具体的な歴史過程に即して論じた「〈生活世界〉の構造転換」のうちの第一の期間で、明治国家の建設、近代的な都市化/産業化、日清/日露戦争での勝利を契機とした19世紀的な帝国主義国家への参入、第一次大戦後の西洋世界の疲弊を契機にした大陸への進出、まで(1868年‐1945年)の期間のこと。

 思想史的には、西洋近代文明の受容と導入、西洋近代文明から照射される形での日本文化/日本思想」の希求の両方を含んだ「西洋との対峙」によって特徴づけられる。

 加えて〈生活世界〉の実態としては、この時期に〈社会的装置〉の構成要素となる「官僚機構」「市場経済」が成立するものの、当時の社会は都市部での大衆社会と都市部以外での伝統的な生活様式とに二極化されており、とりわけ圧倒的多数の人々が住む農村社会では、濃密な〈生活世界〉と〈共同〉の現実が広がっていた。