ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈自己完結社会〉 【じこかんけつしゃかい】


 「本書の主題となる、〈自己完結社会〉の成立とは何を意味するものなのだろうか。それは第一に、われわれが高度化した社会システムへの依存を深めることによって、結果的に目の前の他者、物理的に接触する生身の人間に対して、直接的な関わりを持つ必然性を感じられなくなっていく事態を指している。……こうした人間のあり方のことを、本書では〈生の自己完結化〉と呼んでいる。〈自己完結社会〉にはもうひとつ、本書で〈生の脱身体化〉と呼ぶ事態が含まれている。それは主として科学技術の進展によって、われわれが“身体”という鎖からますます解放されるということ、そしてそれに伴い、身体に由来するさまざまな事柄が従来の意味を失っていくことを指している。」 (上巻 ⅰ-ⅱ



 書名にも使用している本書の中心的な概念のひとつ。人為的な環境世界(「人為的生態系」としての〈社会〉、ないしは「生の舞台装置」としての〈社会〉)を創出し、それを世代をまたいで継承させていく人間存在の、一つの未来を象徴する概念。

 とりわけ人々が、「官僚機構」「市場経済」「情報世界」によって構成される〈社会的装置〉にばらばらに依存することによって、〈生の自己完結化〉〈生の脱身体化〉が進行すること、またそれにしたがって〈関係性の病理〉〈生の混乱〉が引き起こされることが、本書を貫く主要なテーマとなっている。