ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「存在を賭けた潰し合い」 【そんざいをかけたつぶしあい】


 「〈間柄〉なき〈関係性〉、あるいはむきだしの「私」を追い求める〈関係性〉においては、人を隔てる“建前”も、またそれによって“隠しておくべきこと”も、「本当の私」を偽る不純なものとしてしか感受されはしないだろう。それゆえ人々は引き際を知らず、〈関係性〉を築こうとして、いつでも自意識にまみれた虚構の「この私」同士による、存在を賭けた潰し合いを繰り広げてしまう。」 (上巻 227



 〈関係性〉の足がかりとなる〈間柄〉(互いに共有可能で、安心して行使できる振る舞いの型)が欠落した状況(「0か1かの〈関係性〉」)などによって出現する、非常に不安定で負担の大きい〈関係性〉のあり方のひとつ。

 この場合、人々の自己認識が、「〈関係性〉の場」に根づく〈この私〉ではなく、「〈関係性〉の場」から独立した「この私」に変質するなかで、互いが互いを「意のままになる他者」として価値付け、自らを「ありのままの私」「かけがえのない私」として認めさせようとするために生じる、熾烈な争いのこと。