ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈この私〉(〈関係性〉のなかに成立するものとしての) 【このわたし】


 「このことは「私」という存在が、「私」としてあることに先行して「意のままにならない」ものたちと出会い、まさにそうした〈他者存在〉の直中において、〈この私〉となっていくことを示しているだろう(10)。……さらに〈自己存在〉が、無数の「〈我‐汝〉の構造」を通じて〈この私〉としてあるとき、それぞれの「〈我‐汝〉の構造」は互いに影響し合い、〈この私〉に連なる“世界”を形作っているとも言える。」 (上巻 209-210



 無数の〈他者存在〉との「〈我‐汝〉の構造」ないしは「意味のある〈関係性〉」の網の目(「〈関係性〉の場」)のなかから現前してくる〈自己存在〉のことを強調して、しばしばこのように表現する。

 これに対して「この私」と表記されるのは、肥大化した自意識によって、こうした〈関係性〉の網の目から切り離されてもなお成立しうると錯覚された虚構の自己概念のこと。