用語解説
〈この私〉(〈関係性〉のなかに成立するものとしての) 【このわたし】
- 「このことは「私」という存在が、「私」としてあることに先行して「意のままにならない」ものたちと出会い、まさにそうした〈他者存在〉の直中において、〈この私〉となっていくことを示しているだろう(10)。……さらに〈自己存在〉が、無数の「〈我‐汝〉の構造」を通じて〈この私〉としてあるとき、それぞれの「〈我‐汝〉の構造」は互いに影響し合い、〈この私〉に連なる“世界”を形作っているとも言える。」 (上巻 209-210)
無数の〈他者存在〉との「〈我‐汝〉の構造」ないしは「意味のある〈関係性〉」の網の目(「〈関係性〉の場」)のなかから現前してくる〈自己存在〉のことを強調して、しばしばこのように表現する。
これに対して「この私」と表記されるのは、肥大化した自意識によって、こうした〈関係性〉の網の目から切り離されてもなお成立しうると錯覚された虚構の自己概念のこと。