ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「人為的生態系」(としての〈社会〉) 【じんいてきせいたいけい】


 「人間の存在としての特性は、自然生態系の表層に「人為的生態系」を創出し、その二重の〈環境〉のなかで生きるというところにあったからである。……つまり個体性を維持しながら、同時に非血縁的な集団をこれほど大規模かつ緻密に展開できる生物、そして何より物質的/非物質的側面を問わず、それ自体でひとつの実体を持つかのような巨大な「人為的生態系」としての〈社会〉を創出し、しかもそれを延々と途切れることなく次世代へと受け継いでいく生物、それはやはり人間だけだと言えるからである。」 (上巻 97-98



 人間存在が、自然生態系の表層に人為的に形成した生態系(社会環境)のことで、物質的な「社会的構造物」だけでなく、非物質的な「社会的制度」「意味体系=世界像」という三つの成分によって構成されている。

 「人為的生態系」は、人間自身によって構築されたものであるにもかかわらず、人間は、この「人為的生態系」を媒介することではじめて生物学的なヒトを内包した人間存在として成立することができる(「赤子のロビンソン・クルーソーの比喩」)。

 しかもある世代に構築された「人為的生態系」が、世代を越えて絶え間なく継承されていく、といったところに人間存在の生物学的な特殊性があると言える(道具を作成する生物や、さえずりなどを継承させる生物も存在するが、このメカニズムがこれほど大規模なものはホモ・サピエンス以外に見られない)。

 また、「人為的生態系」は、長らく人文・社会科学において「社会的なもの」と呼ばれてきたものに相当し、このことを強調する場合に、「人為的生態系」としての〈社会〉と表現される。