用語解説
〈関係性の病理〉 【かんけいせいのびょうり】
- 「〈社会的装置〉への依存によって、われわれは生身の他者と直接関わらなくても本質的には生きていける。互いにそうした前提を共有しているために、容易に相手を信用できず、また些細なことで不安になるだろう。……本書では、こうした事態のことを〈関係性の病理〉と呼ぶ。それは、不用意に他者に介入することへのわれわれの異常な恐れ、互いに負担をかけまいと行使される異常なまでの気遣い、そして関係性を維持することにも、構築することにも多大な困難を抱えて苦しむわれわれの姿に他ならない。」 (上巻 ⅴ)
主に、生身の他者との間に直接的な関係性を持つ必然性を感じられなくなる〈生の自己完結化〉の帰結として、人々が直接的な関係性を維持、構築していくことに多大な困難を抱えるようになること。
人々は〈社会的装置〉を介してつながりあっているものの、個々人の経験の次元においては、互いに互いを必要としていないように思えるという心理的影響が、関係性のハードルを非常に高めることになる。
その結果として、〈社会的装置〉を媒介した気軽な関係性とは対照的に、生身の関係性が負担やリスクとしてのみ感受されるようになり、人々はやがて直接的な関係性を構築すること自体を次第に諦めるようになっていく。