ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「世界観=人間観の提示」(「現代人間学」の第三原則) 【せかいかん=にんげんかんのていじ】


 「しかし「普遍的な真理」の探求を否定すると言うのであれば、「現代人間学」は、いったい何を目指すことになるのだろうか。例えば前述したように、その試みは確かにひとりひとりに現実との対峙を要請している。とはいえそれは、例えば“現場”へと直接足を運んだり、政策的次元において何か“役に立つもの”を提言したりするといったことではない。……そしてこのことに関わるのが、第三の原則である「世界観=人間観の提示」である。」 (上巻 6



 本書の方法論である「現代人間学」の第三原則で、〈思想〉の実践を試みるにあたって、新たな「世界観=人間観」(われわれが何事かを思考、判断していく際にあらかじめ持っている形而上学的・認識論的な前提や枠組み)そのものの提示を試みていくこと。

 「現代人間学」では、その目標を「普遍的な真理」の解明に定めず、われわれ自身が生きる時代の現実や、われわれの文化的な肌感覚に合致した〈思想〉の創造を重視する(「絶対的普遍主義の否定」=「現代人間学」の第二原則)。

 われわれは“哲学”の役割を往々にして「普遍的な真理の解明」に求めがちだが、人文科学における哲学の役割は、人文科学全体を支える基礎概念を整備し、体系化していくことでもある。

 本書が求める〈思想〉の表現としての〈哲学〉は、その役割をさらに突き詰め、われわれが世界や人間それ自身を理解し、認識するための“捉え方”の可能性をさまざまな形で追求する。

 こうした「世界観=人間観」の希求は、われわれの置かれた現実の意味を問うだけでなく、さまざまな世界や人間の可能性を問うことを通じて、われわれの〈文化〉の層をより厚く豊かなものにしていく潜在力を持つだろう。こうした意味での創造性の重視こそが、「現代人間学」といわゆる単なるプラグマティックなアプローチとの違いである。