ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「現代人間学」 【げんだいにんげんがく】


 「本書が依拠する「現代人間学」は、そうした問題意識に基づく、ひとつの新しい哲学的方法論であると言える。ここではその特徴について、以下の四つの原則、すなわち①「何よりも優先されるべき〈思想〉の創造」、②「絶対的普遍主義の否定」、③「世界観=人間観の提示」、④「強度を備えた〈思想〉の希求」という観点から、具体的に見ていくことにしよう。」 (上巻 4



 本書の中心にある学術的立場で、これまでの人文科学的な知、とりわけ従来の哲学のあり方に対する反省から、「人間とは何か」という最も根源的な問いに立ち返るとともに、文献学的な精密さや体系性よりも、〈思想〉の創造それ自体を重視する、ひとつの哲学的方法論のこと。

 今日われわれは人文科学が追い求めてきた従来の人間的理想が解体した時代を生きており、人文科学的知そのものが現実を理解し、未来を指し示す説得力を喪失していく、人文科学の危機に直面している(例えば心の病の日常化、高齢化する引きこもり、生涯未婚率の増大、孤独死の蔓延を想起するだけでも、従来のアプローチである人権擁護や富の再分配、抑圧の可視化といった観点だけでは到底捉えきれないものを含んでいる)。

 なかでも基礎概念を扱う哲学は、そうした人文科学的知の下支えを行う重要な位置にあるものの、翻訳と読解に注力するあまり(それ自体は価値ある営為であるのだが)、海外のトレンドを後追いすることしかできずにいた。しかし危機の時代に求められるのは、それぞれの社会や文化的な肌感覚を踏まえた新たな思想の可能性それ自体を探っていくことである。

 「現代人間学」は、そうした問題意識に立ち、「〈思想〉の創造」それ自体に力点を置いた、新たな哲学的方法論として構想されるものである。そこでは、「人間とは何か」という人文科学の最も根源的な問いに立ち返るとともに、「優先されるべき〈思想〉の創造」(第一原則)「絶対的普遍主義の否定」(第二原則)「世界観=人間観の提示」(第三原則)「強度を備えた〈思想〉の希求」(第四原則)といった四つの原則が提示される。

 本書には、〈自己完結社会〉の成立を分析するという目的とともに、その分析を通じて、この新たな哲学的方法論を実践していくというもうひとつの目的があるのである。