ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「強度を備えた〈思想〉の希求」(「現代人間学」の第四原則) 【きょうどをそなえたしそうのたんきゅう】


 「第四の原則となる「強度を備えた〈思想〉の希求」である。まず、ここで「強度」と言うとき、そこには〈思想〉が持つ二種類の潜在力のことが念頭に置かれている。そのひとつは、時代の不確実性や不透明性を前にしても、なおその〈思想〉が耐えうる潜在力のことを指し、もうひとつは、その〈思想〉に備わっている人心を動かしうるだけの言葉の潜在力のことを指している。」 (下巻 7



 本書の方法論である「現代人間学」の第四原則で、〈思想〉の創造を試みる際、それを移り変わる時代の不確実性や不透明性に耐えうる、そして人心に響く言葉の潜在力を備えたものとして鍛錬していくこと。

 「現代人間学」は、「絶対的普遍主義」を退け、〈思想〉の創造それ自体を第一目標とする。とはいえ〈思想〉といっても、目指されるべきものは、世の中の時勢によって直ちに陳腐化するようなものであったり、理論的には成立していても、その言葉が人々に響かないものであったりしては不十分である。

 〈思想〉が“強度”を備えたものになるためには、その理論が、時代を超えた人間存在の本質を何らかの形で掌握したものになっていること、そしてその言葉が、〈生〉の現実と対峙し、そこでさまざまな思いを抱えて生きる人々の琴線に触れるような表現を含んだものになっている必要がある。優れた〈思想〉には、優れた理論や表現だけでなく、優れた「美意識」もまた求められるのである。