ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「究極の平等社会」の比喩 【きゅうきょくのびょうどうしゃかいのひゆ】


 「例えばここで、“究極の平等”が実現した社会について考えてみよう。まず、そこではすべての人間に遺伝子操作が加えられ、人々は身体的潜在能力の「総和」が等しくなるように生まれてくる。……もちろんその社会には、「不平等」の元凶となりうる相続などという概念は存在しない。「初期設定」として与えられる財は、〈社会的装置〉によって厳密に管理されており、死亡した人間の所有物は、すべて一様に〈社会的装置〉へと還元されるようになっているからである。」 (下巻 124-125



 〈無限の生〉の敗北を超克するために、いっそのこと〈生の自己完結化〉〈生の脱身体化〉を極限まで推し進め、「意のままにならない他者」「意のままにならない身体」からの完全解放を試みる思考実験のひとつで、遺伝子操作と人体改造などを駆使して、人間存在を基礎づけている生まれながらの不平等(〈有限の生〉の第二原則=「生受の条件の原則」)を極小化させ、究極の平等が実現した社会のこと。