用語解説
「底なしの配慮」 【そこなしのはいりょ】
- 「そのためそこでは、ひたすら「私」の“顔”をさらけだし、またさらけだされる「相手」の“顔”を受け止めることによって、文字通り一から〈関係性〉の意味を構築していかなければならない。そして複雑な〈関係性〉の網の目のなかで、その不確かで不安定な〈関係性〉に亀裂が入らないよう、互いに絶えず気を配っていなければならないだろう。それは言ってみれば「底なしの配慮」であり、きわめて負担の大きい〈関係性〉のあり方なのである。」 (上巻 224)
〈関係性〉の足がかりとなる〈間柄〉(互いに共有可能で、安心して行使できる振る舞いの型)が欠落した状況(「0か1かの〈関係性〉」)などによって出現する、非常に不安定で負担の大きい〈関係性〉のあり方のひとつ。
この場合、複雑に絡み合う「〈我‐汝〉の構造」の構造の網の目のなかで、相手の振る舞いや意図が予測不可能となり、自らもまた適切な自己の振る舞いを見いだせなくなる事態を指す。
人々の自己認識が、「〈関係性〉の場」に根づく〈この私〉ではなく、「意のままになる他者」を求める「この私」に変質していくと、〈間柄〉を欠いた〈関係性〉は、互いに互いの存在の根拠が脅かされるかのような「存在を賭けた潰し合い」をもたらすことになる。