ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈存在の強度〉 【そんざいのきょうど】


 「ここでわれわれは、再び〈存在の強度〉という概念について想起しなければならない。……人間は、自らの存在の意味をこの世界のなかに根づかせることによってはじめて、〈生〉に対する現実感覚というものを獲得することができる。つまり「人間的〈生〉」の等身大の実現を通じて、時空間的な〈連なり〉のなかに自らを位置づけることができたことこそが、そこでは人間の存在理解に対して〈強度〉を与えていたのである。」 (上巻 185



 人々が自らの〈生〉を実感のあるものとして掌握し、「意のままにならない生」の現実がもたらすあらゆる残酷さにいちいち動揺することのない心の強さを表した概念。

 「〈生〉の分析」(第二のアプローチ)の視点においては、「〈生〉の不可視化」「〈生活世界〉の空洞化」を通じてわれわれの〈生〉が〈存在の連なり〉に根づかないものとなったことが〈存在の強度〉を脆弱化させ、〈生の混乱〉をもたらすひとつの原因になったと説明される。

 本書では、それは〈存在の連なり〉を生きる〈この私〉としての自覚と、「意のままにならない生」の「肯定」を意味する〈世界了解〉の先にあって、自らの〈生〉を誇りあるものとして「肯定」することのできる「自己への〈信頼〉」の概念によって置き換えられる。