用語解説
「〈ユーザー〉の倫理」 【ゆーざーのりんり】
- 「実際に現代の子どもたちは、あたかも通過儀礼のように、「経済活動」を実践するための一般教養と「コミュニケーション能力」の涵養を要請されている。そして現代的〈生〉において最も価値あるものとは「自己実現」であり、「学校教育」も、「経済活動」も、いわばそれを達成していくための手段であると教えられているだろう。それらは言ってみれば、この社会で人間が、〈社会的装置〉の〈ユーザー〉として生きていくために必要とされる倫理や作法、換言すれば「〈ユーザー〉の倫理」とでも言うべきものなのである。」 (上巻 154)
「〈生〉の三契機」の実現を〈社会的装置〉への委託によって成立させる「〈ユーザー〉としての生」が拡大した現代社会において支配的になる倫理の枠組みであり、そこでは「自己実現」が人生における至上の価値とされ、それを頂点とする形で「学校教育」は「経済活動」の手段、「経済活動」は「自己実現」のための手段といった具合に価値が再編される。
こうした社会では、「コミュニケーション能力」を含む、こうした価値を具現化する際に有利となる特定の能力や指標のみが突出するため、そうした能力に適性がある人々にとっては「自己実現」のための機会と場が限りなく与えられた世界として認知されるが、そうした価値や能力に適性が低い人々や適応できない人々は、自己肯定ができなくなる。