ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「社会的制度」 【しゃかいてきせいど】


 「われわれはこれまで「人為的生態系」を“物質的側面”からのみ見てきたわけだが、実際には、そこに“非物質的側面”とも呼べるものが存在するのである。……その第一のものは、人間個体を集団的に組織化し、各自の行為の帰結を特定の仕方で機能的に調整していく社会的機構が存在するということである。それをここでは「社会的制度」と呼ぶことにしよう。」 (上巻 93-94



 人間存在が、自然生態系の表層に形成した「人為的生態系」(社会環境、ないしは「社会的なもの」)の一成分。

 近代において成立した「市場経済」「官僚機構(近代的な)」はその典型例であるが、伝統的な社会に見られる慣習や、インドのカースト制度などもこのなかに含まれる。

 「人為的生態系」には、他にも物質的な成分として、人間が自然物に関与すること形成した「社会的構造物」、非物質的な成分としてわれわれが物事を認識し、理解するための概念や意味の基盤(解釈の枠組み)をなす「意味体系=世界像」が含まれている。

 T・パーソンズの社会システム理論などを含む社会学理論では、ここでの「社会的制度」と「意味体系=世界像」が区別されておらず、両者がどのように区別されうるのかはひとつの議論になり得る。

 本書が両者を分けているのは、伝統的な社会を成立させていた「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉と近代以降に成立した〈社会的装置〉の違いを説明する際に、この方が有効であったためである(前者においては、三つの成分が分離しがたく結合していたが、後者においては、「意味体系=世界像」の成分が矮小化し、「社会的構造物」と「社会的制度」の成分のみが突出したと理解されている)。