ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「意味体系=世界像」 【いみたいけい=せかいぞう】


 「ただし「人為的生態系」の“非物質的側面”には、第二のものがある。それは、われわれが物事を理解し、認識するための前提としている概念や意味の基盤、いわば“解釈の枠組み”のことである。それをここでは「意味体系=世界像」と呼ぶことにしよう。」 (上巻 94



 人間存在が、自然生態系の表層に形成した「人為的生態系」(社会環境、ないしは「社会的なもの」)の一成分で、われわれが物事を認識し、理解するための概念や意味の基盤(解釈の枠組み)のことを指している(M・ハイデッガーが「世界内存在」と言うところの「世界」、E・フッサールやA・シュッツが「生活世界」と呼んだところのものに相当する)。

 「人為的生態系」には、他にも物質的な成分として、人間が自然物に関与すること形成した「社会的構造物」、非物質的な成分として人間個体を集団的に組織化し、各自の行為の帰結を機能的に調整していく「社会的制度」が含まれている。

 T・パーソンズの社会システム理論などを含む社会学理論では、ここでの「社会的制度」と「意味体系=世界像」が区別されておらず、両者がどのように区別されうるのかはひとつの議論になり得る。

 本書が両者を分けているのは、伝統的な社会を成立させていた「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉と近代以降に成立した〈社会的装置〉の違いを説明する際に、この方が有効であったためである(前者においては、三つの成分が分離しがたく結合していたが、後者においては、「意味体系=世界像」の成分が矮小化し、「社会的構造物」と「社会的制度」の成分のみが突出したと理解されている)。