ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「人間的〈環境〉」 【にんげんてきかんきょう】


 「ここで問題となるのは、それではわれわれ人間の場合はどうなのかということである。われわれは、人間という存在もまた生物存在の一員であるということを知っている。つまり人間の場合においても、存在によって定義され、同時に存在を成立させる基盤となる、いわば「人間的〈環境〉」というものが想定できるはずなのである。」 (上巻 89



 存在論的な〈環境〉概念は、特定の主体(生物存在)によって独自の形に定義され、同時にその主体(生物存在)をひとつの存在として成立させる基盤となるという二つの意味が含まれている。そして本書では、とりわけその主体が人間存在の場合を「人間的〈環境〉」と呼んでいる。

 生物存在にとって一般的な〈環境〉が、遺伝的に想定された特定の自然環境(自然生態系)であるのに対して、「人間的〈環境〉」には、自然環境(自然生態系)に加え、その表層に人為的に構築された社会環境(「人為的生態系」)が含まれるという点において顕著な特徴(〈環境〉の二重性)がある。

 「人間的〈生〉」(第二のアプローチ)「人間的〈関係性〉」(第三のアプローチ)と一揃いになる概念。