用語解説
「〈間柄〉を引き受けるものとしての〈役割〉」 【あいだがらをひきうけるものとしてのやくわり】
- 「そもそも〈共同〉の実現において、〈間柄〉はきわめて重要な役割を果たしている。別の言い方をすれば、「共同行為」が特定の〈間柄〉と結びつく形で制度化されている場合、〈共同〉はより円滑に進行すると言えるだろう。なぜなら、「人間的〈関係性〉」において、〈間柄〉が「〈我‐汝〉の構造」を「形式化」するように、〈共同〉の局面においては、〈間柄〉が負担の分配を「形式化」すること、つまり〈間柄〉が負担の分配のあり方をあらかじめ提示してくれることで、その分、われわれは合意形成の手間を省くことができるようになるからである。」 (上巻 265)
「〈共同〉のための作法や知恵」としての〈役割〉の原理の一形態で、「人間的〈関係性〉」において、互いの振る舞いを規定する枠組みである〈間柄〉を人々が引き受ける場面で生じるもののこと。
〈間柄〉は、振る舞いの型であるところの〈間柄規定〉を媒介することで〈この私〉同士が直接対峙する事態を回避し、〈関係性〉の負担を軽減させる。この作用と似て、〈共同〉に際して、特定の〈間柄〉が介在するとき、〈共同〉の中身や分担の形、負担の形が〈間柄〉によって規定されることがある。
このとき〈共同〉は、合意形成の手間を省き、人々の意識を「共同行為」の達成に集中させることで、〈共同〉の負担を軽減させる。他方で、〈間柄〉によって規定された「共同行為」は、意に反して割りあてられた負担ともなり、その結果さまざまな不満や不合理の温床ともなる(例えば上司と部下という〈間柄〉による役割分担によって業務の遂行が効率化するが、その上限関係が望まないものだった場合など、結果的に不満や不合理をもたらすことがある)。