ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈共同〉のための事実」(の共有) 【きょうどうのためのじじつ】


 「まず、〈共同〉の第一条件となる「〈共同〉のための事実の共有」であるが、それは構成員の間で、その「共同行為」が互いの〈生〉にとって重要であるという事実認識が共有されているということを指している。」 (上巻 261



 “遠心力”となる〈共同〉の負担を乗り越え、人々が十全な「共同行為」を成立させる“求心力”となる契機のひとつで、当事者たちにとって、その「共同行為」が自らの「利益」になることが事実認識として共有されていること。最も典型的には、その〈共同〉が互いの「〈生存〉の実現」にとって不可欠であるという事実が共有されていること。

 こうした認識は、人々がある種の意志に到達さえすれば、互いに進んで「共同行為」に向かうとする「積極的自由」の観点とは対立するが、「利益」を問題にすることは、本来恥ずべきことでもなければ、人間存在の利他性を否定するものでもない。

 むしろ、人の情けや善意というものを活かすためにも、われわれが細心の注意を払うべき事柄である。なお、こうした〈共同〉の求心力となる契機は、他にも「〈共同〉のための意味」の共有、「〈共同〉のための技能」の共有がある。