ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈共同〉のための技能」(の共有) 【きょうどうのためのぎのう】


 「とはいえ、〈共同〉が成立する条件としては、まだ不十分である。そこで最後に言及したいのは、「〈共同〉のための技能の共有」、すなわち構成員の間で、「共同行為」を実現させるためのある種の“技能”が共有されているという、第三条件である。この「〈共同〉のための技能」を考える場合、最も広い文脈において重要となるのは、負担の分配に関わる諸々の“技能”である。」 (上巻 264



 人々が“遠心力”となる〈共同〉の負担を乗り越え、十全な「共同行為」を成立させる“求心力”となる契機のひとつで、具体的には、人々が互いに意思の疎通を行い、立場や利害、感情への理解を深める「発話の技能」、特定の人間に過剰な負担が生じることなく、また特定の人間だけが負担を被らないフリーライダーとなることもなく、なおかつ個別的な事情に配慮した形で分担の構図を描いていく「工夫の技能」などがある。

 なお、こうした〈共同〉の求心力となる契機は、この他にも「〈共同〉のための事実」の共有、「〈共同〉のための意味」の共有がある。