ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「100人の村の比喩」 【ひゃくにんのむらのひゆ】


 「さて最初に、あるところに“100人”のみによって構成された「村」があることを想像してみてほしい。そしてそこではすべての「村人」が、一切の抑圧や強制がない状態で、無制限に「自己実現」を目指すことが約束されているとしよう。つまりここでは無条件に、音楽家になりたい人間は音楽家になり、陶芸家になりたい人間は陶芸家になることができる。」 (上巻 257



 「牧歌主義的―弁証法的共同論」に含まれる「自由な個性と共同性の止揚」というレトリックにおいて、自発性と自由選択のもとでも十全に〈共同〉「共同行為」が成立するとの前提が人間的現実に照らして誤りであることを「100人のみによって構成された村」に喩えて述べたもの。

 完全な自発性と自由選択のみが存在する世界では、「誰もが恩恵を受ける可能性があることだが、誰もが自発的にしたいとは思わないこと」の担い手が現れず、たとえそれを担う奇特な人間が現れたとしても、そうした人々を自発性と自由選択に基づいて理解するため、次第に後継者がいなくなるからである。

 これが可能となるためには、それを有無言わさずに担ってくれる奴隷やロボットに肩代わりさせるか、人々が非自覚的にそれを担う結果となるよう〈社会的装置〉を発達させるしかない。