ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈距離〉の自在さに関わるものとしての〈許し〉」 【きょりのじざいさにかかわるものとしてのゆるし】


 「したがって円滑な〈関係性〉を築いていくためには、そもそも人間には“隠しておくべき事柄”があるということ、そして何かを隠しておくためには、〈間柄〉という“建前”が必要になるということを互いに了解しておかなければならない。そして相手の生き方、あり方を承認し、引き際をわきまえたうえで、互いに〈間柄〉の背後にある「私」の“顔”を見せる用意があることが求められる。そこには気を許した相手だからこその作法や知恵というものがあるのであって、これこそが、〈距離〉の自在さに関わるものとしての〈許し〉であると言えるだろう。」 (上巻 272



 「〈共同〉のための作法や知恵」としての〈許し〉の原理の一形態で、「人間的〈関係性〉」において柔軟に〈距離〉を行使し、他者に対して気を許すこと。

 〈関係性〉の原理に即せば、人はまず〈間柄〉として出会い、そこから徐々に〈間柄〉の仮面を外し、〈距離〉を縮めるという形を取る。したがってもし、互いが〈間柄〉を超える一切の「介入」を許さないというのであれば、そこに〈信頼〉が芽生える余地などなくなってしまう。

 しかし〈許し〉には〈許し〉の作法があり、「気を許す」ということは、無制限に何ものかを受け入れるということを意味しない。

 円滑な〈関係性〉を築いていくためには、人間には「隠しておくべき事柄」があり、何かを隠しておくためには〈間柄〉の“建前”が必要になること、また相手の生き方、あり方を承認し、引き際をわきまえたうえで、互いに〈間柄〉の背後にある「私」の顔を見せる用意があることなどが重要となる。