ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「自然主義の共同論」 【しぜんしゅぎのきょうどうろん】


 「まず、第一の論点となる「自然主義の共同論」とは、前述のように、「共同行為」を「成員の相互扶助的で共感的なあり方」といった精神(共同性)に基礎づけたうえで、それを「社会性一般」や「人間的つながり」にまで拡張し、社会的存在としての人間の本性とも言うべき根源的なものとして理解する立場のことを指している。」 (上巻 250



 「共同体批判の共同論」「自由連帯の共同論」と並んで「牧歌主義的―弁証法的共同論」を構成する主要な論点のひとつで、われわれが“共同”という言葉から漠然と連想する「人間的つながり」や「相互扶助的で共感的なあり方」など(共同性とも言う)を人間の根源的な性質(社会性、ないしは社会的存在)と見なす立場のこと。

 ここから、資本主義社会における人間疎外や人々の私人化、孤立化といった負の側面を批判する際に「人間に本来備わっているはずの共同性が、近代的な交換/契約関係によって歪められた」、ないしは「近代的な交換/契約関係に由来する“歪み”を取り除き、人間本来の共同性を取り戻さなければならない」といった代表的な「疎外論」のロジックが成立する。

 しかし、「100人の村の比喩」からも見えるように、「共同行為」は決して無条件的に成立するものではなく、外部からは「人間的つながり」や「相互扶助的で共感的なあり方」に見えるものであっても、実際には構成員の技能をはじめ、さまざまな条件が揃ってはじめて可能となるものである。