ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「塗りつぶされた〈関係性〉」(〈間柄〉によって) 【ぬりつぶされたかんけいせい】


 「われわれが人間の本質を掌握してくためには、ここで第二のプローチとなる「〈生〉の分析」を導入し、その存在を再び生身の人間に等身大のものとして描きだしていく必要がある。そして人間存在を等身大のものとして描くということは、われわれが生活世界を舞台として展開している〈生〉をめぐる諸々の活動、すなわちわれわれが「生きる」と呼んでいる営為の本質を問うということを意味しているのである。」 (上巻 143



 もともと〈間柄〉は、〈関係性〉の「形式化」によって双方の「〈我‐汝〉の構造」がもたらすズレを緩和させ、負担(「内的緊張」)を軽減させる機能を持つものである。

 しかしこの「形式化」が強すぎると、望まない振る舞いを強制される感覚が強くなったり、〈関係性〉に「〈我‐汝〉の構造」を介在する余地がなくなったりすることによって、「意味のある〈関係性〉」を成立させることが困難となってしまう。

 「塗りつぶされた〈関係性〉」は、このことを比喩的に表現したものである。なお、その典型的な事例は、「市場経済」の文脈上で、「経済活動」に象徴される、「財やサービスを生みだす側」と「財やサービスを消費する側」といった〈関係性〉である。