ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈社会〉と〈自然〉の切断」 【しゃかいとしぜんのせつだん】


 「したがって本書では、「〈自然〉と〈人間〉の間接化」に続く第二の特異点のことを、ここで象徴的に「〈社会〉と〈自然〉の切断」と呼ぶことにしたい。そこにあるのは、〈自然〉との「整合性」を無視したまま、純粋に〈社会〉の論理のみによって恒久的に自己拡張していく〈社会〉の姿なのである。」 (上巻 121-122



 人類史を〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係として捉えたときに見えてくる、人間の存在様式の質的変容に関わる第二の特異点のこと。

 この特異点以前の〈社会〉が、どれほど膨張したとしても基盤となる自然生態系の制約から逃れられなかったのに対して、「国民国家」、「市場経済」、「化石燃料」という三つの要素を伴った「近代的社会様式の成立」は、一見、科学技術によって自然生態系の制約をコントロールし、「化石燃料」を掘れば掘った分だけ無制限に「人為的生態系」の〈社会〉を肥大化させることが可能であるかのように見えた。

 しかし「近代的社会様式の成立」さえも、結局は地球生態系の制約の中にある。そのことを気づかせたものこそが、今日“環境問題”と呼ばれているものである。