用語解説
「特異点」(人類史における) 【とくいてん】
- 「つまり〈環境〉の「二重構造」を基盤として蓄積され続ける「社会的なもの」、物質的/非物質的側面を問わず、「人為的生態系」としての〈社会〉の変容という生物進化とは異なる原理によって、人間は自らの存在様式を“質的に”変容させてきたのである。……人類史的な観点から見えてくるのは、われわれの過去に、こうした質的変容が大規模に進行した、いわば“特異点”とも呼べるものがいくつか存在するということである。」 (上巻 106)
人類史700万年における〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係をめぐって、人間の存在様式が質的に大きく変容したと考えられるタイミングのこと。
具体的には、「〈人間〉と〈自然〉の間接化」を引き起こした「農耕の成立」(第一の特異点)、「〈社会〉と〈自然〉の切断」を引き起こした「近代的社会様式の成立」(第二の特異点)がある。本書では、〈自己完結社会〉の成立に伴う〈生の自己完結化〉と〈生の脱身体化〉が、「〈社会〉と〈人間〉の切断」という第三の特異点に相当する可能性があるという点から議論を展開させていく。