ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「環境哲学」 【かんきょうてつがく】


 「環境哲学」では、人間というものを、その存在を取り囲む〈環境〉との関係性において理解する。このことは人間存在の本質を“外部”の目線から認識すること、つまり人間を客体として、直接的には“生物存在”の一類型として認識することを意味している。ここから浮かびあがってくるのは、進化によって形作られた生物存在としての人間の特性である。 (上巻 9



 本書が、人間存在の本質とは何かを明らかにするために用いている三つのアプローチのうちの一つで、人間存在の本質を生物存在の一類型という形で“外部”の目線から分析するための枠組み。

 西洋哲学の伝統的な「世界観=人間観」においては、人間存在の本質は、他の生物存在との差異、とりわけ生物学的な本性や身体、環境によって規定されない理性や自由の能力に求められ、その結果として人間理解に多大な矛盾や誤りをもたらしてきた。

 確かに人間存在には、他の生物存在にはない特殊性があるとはいえ、そうした境界線は視点の位置によって変動しうるものだと理解すべきである(例えば、ゾウの特殊性に注目すれば、ヒトは他の哺乳類と同じ位置に置かれるだろう)。

 重要なことは、むしろ人間存在もまた明白に生物存在の一員であるという事実の上に立ち(〈有限の生〉の第一原則=「生物存在の原則」)、そこから人間存在のヒトとしての生物学的な特性について理解を深めることである。

 なお、三つのアプローチには他に、人間存在を、その存在がこの世界で実現する〈生〉の具体的な活動のなかから理解する「〈生〉の分析」と、その存在を“自己”と“他者”が織りなす〈関係性〉の構造のなかから理解しようする「〈関係性〉の分析」がある。