ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「天動説の比喩」 【てんどうせつのひゆ】


 「ここでは最初に、「天動説の比喩」というものを用いることによって、この二つのアプローチの違いについて考えてみよう。……宇宙から見た地球という、外部の目線において正しいのは地動説であったとしても、“生身の人間“にとって等身大なのはむしろ天動説の方であって、その方がかえって物事をより忠実に、実感を伴う形で伝えることができるということなのである。」 (上巻 143-144



 人間存在の本質を論じるにあたって、それを外部の目線(「環境哲学」)から捉える場合と、内部の目線(「〈生〉の分析」)から捉えるのとでは、たとえ同一のものであっても、異なる枠組みが必要になることを、比喩を用いて説明したもの。

 なお、「天動説の比喩」は、もともと玉野井芳郎による、以下の提起を手がかりにしたものである。

 「地球上の生物の生活に妥当する空間は、朝、東から太陽が昇って夕に西に没する天動の世界なのである。生命系という〈対抗原理〉に基礎づけられる「広義の経済学」の理論的世界像は、おそらく地動説の中に天動の世界を整合的に再構成する体系でなければならないだろう」 (玉野井芳郎(1978)『エコノミーとエコロジー――広義の経済学への道』みすず書房、pp.36-37。